新型コロナウイルスの変異株を追跡!

最終更新: 2月18日

最新の遺伝データから見る新型コロナウイルスの変異を追う


2021年に入り、イギリス、ブラジル、南アフリカで発現した新しい変異株が日本でも出現したことが話題になっている。そこで今回、新型コロナウイルスはどのように変異してきているのか?変異株の系統がいくつあるのか?変異株は国によって違うのか?について迫ってみる。





今回の記事の結論は、次の3つだ!

(2021年2月9日時点)

新型コロナウイルスは、12の系統に分類される。

世界各国で出現しているウイルスの系統は異なっている。

日本は、2つの系統にほぼ集中している。




新型コロナウイルスは、12の系統に分類される


新型コロナウイルスは宿主(人)の中に侵入し、ウイルス自身の遺伝情報(ゲノム)を繰り返しコピーし感染を広げていく。何度もコピーしていくなかで、遺伝情報の一部が正しくコピーできず、コピーミスが発生し(これが変異と呼ばれている)、変異した新しいコロナウイルスが誕生していく。



この遺伝情報を世界中の病院や研究所から集め、どのウイルスが、どのように変異しているかなどを視覚化するためのデータを提供している国際機関のひとつに「GISAID-NextStain」がある。

この機関による「ウイルスの系統(家系図みたいなもの)付け」の取り組みでは、「大規模な変異パターン」と「持続した期間」、そして「地理的な広がり」を持つ遺伝情報をもとにラベル付けをしているのが特徴だ。

ラベルの名づけ方は、ウイルスの系統が出現した年と、各年アルファベット順にAで始まる大文字で構成されている。


実際のデータ(下の図1)を見てみると、次のように12の系統で分類されている。


1. 19A : 新型コロナウイルスが最初に出現した2019年の最初の系統

2. 19B:19Aから派生した系統

3. 20A:2020年に出現し、19Aから派生した系統

4. 20B:20Aから派生した系統

5. 20C:20Bから派生した系統

6. 20D:20Bから派生した系統

7. 20E(EU1):20Aから派生した系統

8. 20F:20Bから派生した系統

9. 20G:20Cから派生した系統

10. 20H/501Y.V2:20Cから派生した系統

11. 20I/501Y.V1:20Bから派生した系統

12. 20J/501Y.V3:20Bから派生した新しい系統


(図1) 出展:「GISAID- NextStain」のデータソースから、系統伝搬ツリーを作成。



(図2)ウイルスの系統別グラフ



上の(図2)は、ウイルスの系統別にグラフ化したもので、1つの「点」にはそのウイルス固有の遺伝情報関連がまとめられている。


・ウイルス情報を確認した日付

・ウイルスの系統

・感染者の在籍国

・発現した国 など



ちなみに、2021年1月に話題となったイギリスからの変異株は、この遺伝情報をさかのぼってみると、2020年5月11日に20C系統から変異し、同年8月4日に新たな系統(20I/501Y.V1)として発現していることがわかる。


また、(図2)から気になる点としては、世界中でしかもほとんどの系統が2020年9月20日前後を境に増加しているのだ。

この10日前あたりに各国で何が起こったのか?各国の人々の行動形態や各国の対策等の分析など、地政学的な視点での考察も必要だろう。




② 世界各国で出現しているウイルス系統は異なっている


それでは次に、各国別に違いがあるのかどうか見てみよう。


2021年2月9日現在、感染拡大しているイギリス、ブラジル、インドを見てみると、次のようにある特定の系統に集中しているのが特徴的だ。


・イギリス:「20E(EU1)」と「20I/501Y.V1」の2系統 (図3)

・ブラジル:「20B」と「20J/501Y.V3」の2系統 (図4)

・インド:「20B」「20H/501Y.V2」「20I/501Y.V1」「20J/501Y.V3」の4系統 (図5)



(図3) イギリス



(図4) ブラジル



(図5) インド



そして、世界でもっとも感染者数が多いアメリカでは、12種類ほぼ全系統のウイルスが存在していることがわかる。(図6)


(図6) アメリカ合衆国




③ 日本は2つの系統に集中している


日本は下の(図7)のとおり「19B」と「20B」の2つの系統に集中している。(系統ラインが密接し、20Dの系統ライン上に存在しているように見えるが、データ上は20B系統のライン上に存在している)


また、このグラフの右上の点をみると、既に2021年1月2日にイギリス、ブラジル、南アフリカで発生している新たな変異種も、日本で検出されていることが分かる。


(図7) 日本



一方、中国は「19B」の系統に集中していたが、2020年3月までには終息し、その後、他の系統のウイルスが出現してもほとんど終息している。


(図8) 中国



まとめ


ゲノムデータ「GISAID- NextStain」から、新型コロナウイルスは12の系統に分類することができ、そして各国がどの系統にどのくらいの期間、集中的に感染しているのかが分かる。


1. 19A : 新型コロナウイルスが最初に出現した2019年の最初の系列で、主に中国に分布

2. 19B:19Aから派生した系統で、主に中国に分布

3. 20A:19Aから派生し、2020年に出現した系統で、世界的に分布

4. 20B:20Aから派生した系統で、世界的に分布

5. 20C:20Bから派生した系統で、世界的に分布

6. 20D:20Bから派生した系統で、南アメリカ・南ヨーロッパ・南アフリカに集中

7. 20E(EU1):20Aから派生した系統で、ヨーロッパに集中

8. 20F:20Bから派生した系統で、オーストラリアに集中

9. 20G:20Cから派生した系統で、北アメリカに集中

10. 20H/501Y.V2:20Cから派生した系統で、南アフリカの集中

11. 20I/501Y.V1:20Bから派生した系統で、イギリスに集中

12. 20J/501Y.V3:20Bから派生した新しい系統


ここまでで分かった事から、次のような心配事が生まれるだろう。


・国境を越え、他の国から違う系統のウイルスが入ってきたら、どう対処するのか?

・海外に渡航し、日本に無い系統のウイルスに感染した場合、どんな症状になるのか?

・開発されたワクチンは、すべての系統のウイルスに効果的なのだろうか?


しかし、過去の歴史からこのような心配事も、まもなく無くなるだろう。私たちの先祖が「ペスト」や「スペイン風邪」で打ち勝ってきた教訓「集団免疫」を獲得することが唯一の方法だ。そして、それを効果的に実現するための手段が「ワクチン」の開発と接種だ。日本だけでなく世界各国でワクチンによって集団免疫を目指し、徹底的な予防行動をとってウイルス感染を押さえつけ終息させることだ。


2021年2月9日時点では、イギリス、ブラジル、南アフリカでの新しい変異株(系統では「20H~20J)へのワクチン効果の有無がまだ調査中ではあるが、20G系統までのウイルスには抑え込みに成功していると考えられる。今までの他のワクチン同様、常に新しい変異株に対応してアップデートして開発されるため、新しい変異株が出現しても対応できるはずだ。現代社会において、ペストやスペイン風邪が脅威ではなくなっているように。


ゲノム分析と追跡によってワクチンの開発や早めの感染予防対策につながることから、世界各国の研究所や大学で調査・研究が行われている。本ブログでも継続して最新情報をお届けしていく予定だ。

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